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2012年7月

2012年7月 1日 (日)

労働政策フォーラムに行ってきました。―新しい生き方・働き方とは?―

 かなり久しぶりの更新になります。みなさん、お元気でしたか?

 昨日、労働政策フォーラムを参観してきました。このフォーラムは労働政策研究・研修機構という厚生労働省所轄の独立行政法人が企画したものです。どういう経緯でこのフォーラムの存在を知ったのかは忘れてしまいましたが、参観を決めたのは「若者は社会を変えるか―新しい生き方・働き方を考える―」というタイトルに強く関心をひかれたからです。『三年で辞めた若者はどこへいったのか』についての記事を書いてから、私の関心事や活動方針が大きく変わったことにお気づきの方もいるでしょう。ブラック企業の問題は、急速な社会情勢の変化に企業や法整備が追いついていないことが大きな原因と考えられます。その社会情勢の変化に対応できるような社会を形成する方向性を持つ活動には、ジャンルを問わず首を突っ込んでいこうと今は思っています。

 「生きさせろ!」というスローガンは、反貧困ネットワーク副代表という肩書を持つ社会運動化の雨宮処凛氏の代表的な著書のタイトルに由来するものです。このスローガンは「雇用や社会保障を正常に機能させろ」という主張なわけですが、日本社会の現状を考えれば至極当然な主張と言えるでしょう。社会保障の実情に関しては、こちらの記事をお読みください。私もその主張に基づいて記事を書いてきましたし、その姿勢は今後も変えるつもりはありません。しかし、社会を真っ当な方向に変えていく運動は、それだけではないと気付きました。インターネットの普及から新しい働き方の可能性を探るブロガーのMG氏は、そのブログの記事の中で「生きてやる」というスタンスの方がいいのではないかと提案しています。つまり、国や企業に頼らずに自分の力で生きていくための手段やネットワークを獲得してしまおうというのです。極端な話に思えるかもしれませんが、これも社会変革の可能性を大いに秘めていると言えるでしょう。NPO、ソーシャルビジネス、協同労働、創職、ノマドワークなど、企業に勤めるという手段を取らない働き方への関心が、昨今急速に高まっています。それは、既存の雇用システムを維持することの限界が近いことを示しているのかもしれません。それでも、こういった新たな働き方の普及はブラック企業にでも勤めなくては生きていけない、職場を選ぶ余裕がないという人に、逃げ道を確保することができるという点で、非常に前向きな意味を持つと言えるでしょう。社会変革というと、デモや街頭演説などで法整備を訴えるという方法をイメージするのが一般的だと思います。しかし、それまでになかった生活スタイルが普及し、それに伴って法整備の必要性が生じるという順序で社会の様相が変わってきたというのが実際のところではないでしょうか。いわゆる社会運動だけでなく、生き方の変化こそ社会変革の要因であると言えるでしょう。私は今後「生きさせろ」と「生きてやる」の両方に社会変革の期待を寄せ、関わっていこうと考えています。

 しかし、そういった新しい働き方は、どれも実績や能力のある一部の人にしか開かれていないというのが現状です。「生きてやる」にしても、自助努力のみで個人レベルのセーフティネットを確立するのは相当なスキルを要することでしょう。今回のフォーラムの目的は、新しい働き方の実践例を紹介することでその一般化の可能性を探り、そのためにどのような政策・制度・法律の整備が必要となるのかを検討する必要性を訴えるものでした。こういった独立行政法人や学術的な立場にいる人たちの間でも、このような議論が生じるようになったということは非常に大きな意味を持つでしょう。新しい働き方の探求は、もはや一部の先進的な人だけの関心事ではないのです。

 それでは、フォーラムの内容を大雑把にですが紹介していきましょう。メインのプログラムとなるソーシャルビジネスの実践報告の前に、東京大学大学院教育学研究科の本田由紀氏の講演がありました。「社会構造の変容と若者の現状」と題された講演は、現在の異様な労働環境がどのような背景で形成されていき、若者が現在どのような状況に置かれているのかを非常にわかりやすく解説するものでした。そのなかで紹介された、戦後日本型循環モデルと名付けられた図は、高度成長期以降の日本社会が教育現場、職場、家庭の役割が明確に分かれながらも強固に結びつき、非常に機能合理的なシステムを有していたという点がよくわかるものでした。

戦後日本型循環モデル(資料p.2)

この社会システムは日本経済の維持・発展に大きく貢献しましたが、その機能合理性を維持することが自己目的化し、家族や教育の本質的な意味を置き去りにし、様々な問題も同時に生じさせました。バブル崩壊以降は、この循環モデルを維持することが困難になり、その輪からあぶれてしまう人も現れました。また、現代の労働者は、高給だが長時間労働に苦しむ層、低賃金で生活の維持が困難な層など、格差による分断が生じており、それぞれが抱える問題の質が異なるため、共感が生まれず連帯しにくい状態にあるといいます。以前「分断支配とどう向き合うか」という記事も書きましたが、こういった背景があったのですね。さて、本田氏のすごいところは、ちゃんと「ではどうすればよいのか」というモデルを示しているところです。本田氏の示す新たな社会モデルとは、教育現場、職場、家庭が双方向的に結びつき、開かれた関係を結んだ社会です。そしてその前提として、セーフティネットを適切に機能させ、また社会復帰のためのアクティベーションも積極的に行われることを強調していました。

 実践報告では様々なソーシャルビジネスの例が紹介されていましたが、ここでは特に大きな注目を集めている事業を紹介します。それは「コラボ・スクール」といって、東日本大震災で被災し落ち着いて勉強する場を失った子どもたちに勉強の場を提供しようという事業です。詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。この事業のすごいところは、職場を失った塾の講師への支援も兼ねているところです。勉強したい、働きたいという願いを同時に叶えてしまう、素晴らしい事業だと言えるでしょう。

 こういったソーシャルビジネスに対する注目も以前より高まってきているとはいえ、課題も多く残されているといいます。例えば、1つの事業が波に乗っても、それを引き継ぎ維持・発展させていく人材を育成する余裕が今のシステムでは確保できないという問題があります。1人の有能なリーダーがカリスマ的に事業を引っ張っているというのが今のソーシャルビジネスの実情なのでしょう。誰もがこういった形式の事業に安心して参入できる土壌を作ることが当面の課題です。韓国では社会的企業育成法という法律が2007年に制定されたそうです(しかも7月1日施行!)。なんと、人件費を国が負担してくれる上に法人税なども減免される制度です。これはスゴイ!

 今回のフォーラムでは、肝心の「新しい生き方・働き方」の具体的な支援策の明確なビジョンは打ち出すことはできていませんでした。日本では現段階ではほとんど手つかずの状態にあると言えます。しかし、公的、学術的な立場にいる人たちの間でも、そのような支援の必要性はますます増していくことでしょう。彼らは企業に属さない生き方・働き方をより良く生きる価値ある手段として認めているのです。私はそれに大きな希望を見出しています。

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