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2012年8月18日 (土)

ブラック企業大賞と、犯罪容疑者の実名報道の是非

 今回は法律に関する話題ですが、法律のことなんてこれっぽっちも勉強したことのないQ崎がわずかな知識を振り絞って書きます。また、今回は私個人の意見をたっぷり盛り込んでいますので、突っ込みどころが多々あるのではないかと思います。ぜひたくさんのコメントをお願いします。

 さて、ブラック企業大賞2012という催しがネット界隈で一時期話題になりました。ブラック企業撲滅デモなんてものを企画した身としてはこの催しの趣旨には大きく賛同しますし、正直なところ「いいぞ!もっとやれ!」と思いました。しかし、同時に「こんなことやっちゃっていいの?」とも思いました。というのも、私がブラック企業撲滅デモを企画した時にも、同じようにブラック企業の情報を集めてデモ行進をしながら社名を挙げて糾弾しようということも考えたからです。しかし、結局のところそれは行いませんでした。それは、情報が寄せられた企業が本当にブラックかどうかを検証する術がなかったのと、事実であってもある個人や団体に不利益となる情報を公開すると名誉毀損に当たる場合があるからです。つまり、会社名を挙げて「この企業は社員を過労に追い込むブラック企業だ!」と糾弾することはできないのです。これはネットでの情報発信にも当てはまるので、皆さんもお気をつけください

 「え~!なんで法律に違反している悪い企業の情報を広めることが罪に問われるんだ?」と思いますよね。私は思いました。悪いやつらが不利益を被るのは当然で、それを禁止するのは社会正義に反するではないかと。しかし、それにもちゃんと理由がありました。それは「私刑の禁止」です。犯罪者に対する刑罰は、司法機関が刑量を決めて実行します。その権限は司法機関のみに与えられています。これを公権力以外の個人や団体に与えてしまったら、とても恐ろしいことになります。法律が特定の個人や団体の思い通りに利用されてしまう可能性があるからです。

 個人がインターネットなどを使ってブラック企業の実態を告発することは、この私刑にあたります。例え実際に犯罪行為が行われていてもそうです。しかし、ここで1つ疑問が浮かび上がります。それは、報道機関による犯罪容疑者の実名報道は私刑にあたるのかということです。ごく日常的に行われていることなのであまり疑問を感じることではないかもしれませんが、改めて考えてみると不思議なことです。結論から言えば、これは私刑にあたります。少年法第61条では未成年の触法少年の実名の公表を禁止しています。つまり、実名報道の社会的制裁としての影響力を認めていることになります。だとすれば、その対象の年齢に関わらず実名報道は禁止するべきです。報道機関は司法機関でも懲罰機関でもありません。また、日本の報道機関はまだ刑の確定していない「容疑者」の段階で実名を報道しています。これは報道倫理に関わる大きな問題です。

 さて、犯罪者に対しては司法機関から罰が与えられ、罪を償うことになります。理屈では、そうして償いを果たせばそれ以上の制裁を受ける必要はありません。本来であれば前科があるとか、犯罪容疑がかけられたとかいうことで不利益を被るようなことがあってはいけないのです。「そんなの甘い!」と思う人もいるかもしれませんが、であれば厳罰化を訴える方向で話を進めるべきです。私刑が禁止されている以上、司法機関によらない社会的制裁は差別にあたると考えるのが妥当です。

 では、企業の労基法違反に関してはどう考えるべきでしょうか。現在では、社名の公表があるどころか、そもそも犯罪として認識されていません。これはヤバイです。では、仮に労基法違反が適切に取り締まられるようになった場合、ニュースで「株式会社○○で労基法違反が行われ、経営者の○○氏に賠償が請求されています。」とアナウンスされるようにするべきでしょうか。

 CSRという概念が日本でも普及して久しいですが、この根底にあるのは、企業という社会への大きな影響力を持つ組織は、より大きな責任を負うべきだという考えではないでしょうか。また、実名報道をするべきだと主張する人達も匿名で報道するべきだと主張する人達も、社会的な影響力の大きい公人に関しては、実名で報道するべきだという共通する意見を持っています。また、刑法では、名誉毀損行為が公共の利害に関する事実に係るもので、公益を図る目的であった場合には、名誉毀損罪にはあたらないとする規定があります。以上の2点を考慮すると、労基法違反などの法令違反のあった企業の情報は積極的に公開すべきであるという結論が導かれます。また、公共の利害という点を考慮すれば、企業の法令違反の情報は厚生労働省などの公的機関が公式に行うべきではないでしょうか。「過労死防止基本法」制定実行委員会では、過労死として労災認定をうけた従業員がいる企業名の公開を求める訴訟に関する情報をまとめています。

現在審議中の、過労死を出した企業名公表裁判を紹介します。

私は実行委員会の主張に全面的に同意します。人命の保護は他の社会正義より優先するべきものですし、公的機関の行う情報公開は私的制裁にはあたりません。過労死は労働法規の違反がいくつも重なった結果生じるものであり、企業による犯罪行為の抑止という観点からは、個々の法令違反を1つずつ洗い出していく作業が必要になるでしょう。なお、東京新聞によると、今回の訴訟の控訴審は今月中に結審を迎えるとのことです。

<過労社会>過労死遺族ら「国は企業名公表を」 地裁開示命令も黒塗りのまま

 私の主張をまとめると、個人の犯罪行為に関しては実名報道は控え、公人及び企業の犯罪行為は公共の利害の観点から実名で報道するべきだというものになります。企業の違法行為に関しては、当然不買運動などの社会的制裁を受けるべきであるし、私たちには企業を適切に評価する消費市民としての責任があります。また、それ以前に厚生労働省や労働基準監督局の取り組みを見直し、企業の違法行為を適切に取り締まる土壌を形成しなくてはなりません。

 さて、話をブラック企業大賞に戻しましょう。ブラック企業大賞では、特定の企業に対し名指しでブラック企業であると公表していますので、名誉毀損罪に該当する可能性が高いです。しかし、企画委員会のメンバーには弁護士も入っていますし、そんなことは承知の上なのでしょう。「過労死防止基本法」制定実行委員会が「公式に公表しろ」といわば正攻法で訴えているのに対し、ブラック企業大賞は「お上がやるべきことをやらないなら、オレたちが勝手にやっちゃうよ」という変化球で勝負しているのではないでしょうか。法的にはアウトである可能性が高いのですが、ブラック企業大賞の取り組みは社会正義の実現のために取るべき手段の選考という観点において、非常に重要な問題提起でもあります。現在の人権の獲得のために必要不可欠であった市民革命にしても、当時の枠組みではテロ行為なわけですし。この点に関しては、企画委員会に直接伺ってみたいと思います。

 企業名公表を求める訴訟の行く末と、ブラック企業大賞への問い合わせの結果はまた記事にしてみなさんにお伝えしたいと思います。これからもQ崎さんのブログをよろしくお願いします。

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